インターネット上に大量に出品されている「訳ありスイーツ」製品を卸売販売するスイーツ問屋は下限価格と、取引先の制限、それを守らなかった場合のペナルティを自社サイト上で明示。
これは独占禁止法に抵触する行為ではないだろうか。筆者は公正取引委員会に問い合わせた。
ある日、筆者は訳ありスイーツをなるべく安く買ってこっそり一人で楽しみたいという、くだらないワガママを実行に移すべく、ネットで訳ありスイーツの情報を探していた。
そうしているうちに、1つのサイトを発見。
株式会社 天然生活が運営する「SWEETS MARKET スイーツマーケット」である。
概要ページ(外部リンク)によると、同サイトは
企業(個人事業主)様向けのスイーツを中心とする 食品全般の会員制卸売りサイト
と説明されている。
業者向けの問屋でも、筆者が所属する近江通信の名義で登録すればきっと仕入れることができるだろうとズルいことを考えながら、登録前にガイドラインに目を通すと、そこには筆者が驚く内容が書かれていた。
そこでは「Amazon出品時」の「下限価格」と「出品制限」が明示されており、さらには記載事項を守らない場合には、「該当の会員様を退会、該当商品取扱不可などのご対応を取らせて頂く場合がございます」とペナルティがある旨が記載されていたのだ。
※実際のページ
amazonへの出品に関して | ネットで簡単仕入れ、訳ありスイーツ1個から卸売★スイーツマーケット
https://sweetsmarket.net/page/amazon-sale
ページ内では訳ありスイーツに対して商品ごとに「下限価格」を明示。
2021年12月10日現在では、12品目の訳ありスイーツ等の食品に対して、下限価格が記されていた。
Amazonで実際に「訳ありスイーツ」と検索すると、同社の製品が大量にヒット。検索の上位をほぼ独占しており、人気を博す「豆乳おからクッキー」や、Amazon内のカテゴリ「まんじゅう」でAmazonベストセラーとなっている「訳あり あんこギッシリ六方焼 どっさり1kg」も最低価格と同じ値段で販売されている。
特に、この「訳あり あんこギッシリ六方焼 どっさり1kg」は記事を書いている現在、10社が出品しているが、全社が定められた最低価格である1,890円で販売していることが確認でき、価格競争が打ち止めとなっている現状が確認できる。
これらを見て、筆者が気になったのが「独占禁止法」の存在。
同法は「公正且つ自由な競争を促進」することを目的とした法律で、商品を小売店などに販売したメーカーや卸売業者が、その小売店などが消費者などに販売するときの価格を拘束・維持する行為を「再販売価格維持行為」として原則禁止しているほか、商品の取引先をなどを制限することを「拘束条件付取引」として原則禁止している。
Amazon出品時の下限価格をサイト上で明示し、商品によってはAmazonへの出品そのものを制限。さらにはそれを守らない場合には退会などのペナルティがあるということ記載し警告。
さらに、Amazonへの出品制限についての注釈を見ると
「amazon内に於ける競合過多を防ぐため、amazon出品時のみ、各商品記載の出品制約を設けております。」
と記載がある。
競合過多を防ぐという趣旨は、業者間の自由な競争を抑止することではないのだろうか。
また、最低価格を定めるという行為や、出品を制限するという行為は、価格競争を抑止することではないだろうか。
同社のお知らせページを見る限り、下限価格を設定する取り組みは2020年6月5日頃には既に行われている事が確認できる。
■■■■■■ 該当商品 ■■■■■■
商品番号【SM00010550】
【 SB会員限定 】 北海道産の天然秋鮭を100%使用!!【簡易包装】皮なしやわらか鮭とば170g
https://sweetsmarket.net/product.php?id=628最低販売価格:1580円(税込)
━━━━━━━━━━━━━━【ご注意】
※6月8日15時までに価格修正のほどお願い致します。
━━━━━━━━━━━━━※ 重要 ※ amazon出品(SB会員限定・皮なしやわらか鮭とば170g)下限価格設定のお願い
https://sweetsmarket.net/news_827.php より引用
Googleのキャッシュ等を見ても、少なくともこの記事を書いている日から見て、少なくとも半年以上は最低価格の提示が行われていたようだが、これは本当に正しいことなのだろうか。
疑問に感じた筆者は公正取引委員会の広報担当官に電話で問い合わせた。
筆者
「インターネット上にあるスイーツの卸売サイトが、そこから購入した商品をAmazonに出品する場合に、最低価格を提示し、それを守らなかった場合のペナルティを明示しているのですが、これは独占禁止法の禁止事項に該当するものではありませんか。」
係官
「個別の案件にはお答えはできないことになっています。そのため、一般論になりますが、流通業者が次の流通業者に対して、再販売価格を指示する行為は再販売価格の拘束として独占禁止法に抵触する場合があります。あくまで一般論なので、この案件がそれに該当するというお話ではありません。」
筆者
「詳しく調査をしていただきたいと思うのですが、どうすればいいですか。」
係官
「窓口が異なりますのでご案内します。」
そうして、筆者は2021年12月9日、案内された公正取引委員会のホームページにある「独占禁止法違反被疑事実についての申告」より報告。公正取引委員会はここから報告を受けた場合、調査をしなければならないとなっているそう。
後日、情報がきちんと到達している確認するため、公正取引委員会に再度連絡。
筆者
「情報は無事に到達していますか?」
係官
「はい、情報は無事に到達しています。」
筆者
「情報が到達した場合、公正取引委員会は必要な調査をするということになっていたと思いますが、調査はするという認識でいいですか?」
係官
「調査に関することについてはお答えできないことになっていますが、仰る通り、申告が為された場合に公正取引委員会は必要な調査を行うことになっています。」
Amazon出品時の最低価格提示と、出品制限、ペナルティ明示。
公正取引委員会はどのような判断を下すのだろうか。
今後の調査の行方が気遣われる。